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運命の恋、不器用な愛 第10話
2005年 11月 24日
お読み下さる方は、恐れ入りますが↓を先にご覧の上、第1話からどうぞ。
「運命の恋、不器用な愛」をお読み下さる方へ 二人はタクシーをつかまえ、ソウル駅に向かい、ただあてもなく、一番早く到着した特急列車に飛び乗った。乗客はまばらだった。二人は中央付近の席に座った。 特急列車から見える景色が少しずつ変わっていった。ソウルのビルやマンション群は遠のき、昔ながらの家が点在し、田んぼが広がってきた。稲はまだ実らず、穂先が青々として風に揺れていた。 「俺の田舎、こんなところだったな・・・。ユノンはずっとソウル?」 「ええ。ジョンスさんはこういうところで育ったのね。いつかジョンスさんの田舎にも行ってみたいわ。」 「何もないところだ。」 「それでもいいの。あなたが入った川や池、全部見てみたいわ。」 「・・・。」 ジョンスは母の言葉を思い出していた。荒れ狂った中学時代、ずっと心を痛めていた母は、少年院を出て、ボクシングに打ち込み始めた時、これで安心、とでも言うように病気になり、そのまま他界したのだった。死ぬ間際、ジョンスと妹たちを枕元に呼んだ母・・・。 “愛する人が出来たら、全身全霊で守りなさい。それが愛ってもんだよ。あんたたちには苦労をかけたけど、私はあんたたちを愛して幸せだった・・・。” 酒乱の夫を持ち、愛に無縁のように見えた母の言葉は、その時は意味が分からなかった。だが、本当に愛するということを身をもって教えてくれた・・・。 ジョンスは意を決したようにユノンの目を見て言った。 「ユノン、帰ろう。」 「今さら何を言うの?せっかくここまで来たのに。帰るのはいや!帰ったらもう2度と会えないかもしれないわ!そんなこと言わないで!せめて残りの1週間、私といて・・・。」 「ユノン、俺はお前を愛している。だがお前のご両親もお前を愛している。俺はお前を愛する人からもぎとるようなことは出来ない。そんなことをしたら苦しむのはお前だ・・・。」 「いやよ!あなたと離れたくない!」 「俺もそうだ。ずっとお前と一緒にいられたらどんなにいいかと思う・・・。昨日からずっと考えてきた。お前に待っててくれと言うか、俺を待つなと言うか・・・。」 ジョンスは苦しそうな顔をして言った。 「俺を待っていてくれ。仕事が終わったら必ずお前を迎えに行く。俺が帰ってくるのを待っていてくれないか。」 「ジョンスさん!」 ユノンは涙を流して頷いた。 「嬉しい・・・。その言葉を待っていたの・・・。私、2年でも3年でも待っているわ・・・。」 けなげに言うユノンをジョンスは抱きしめた。 「だから・・・今は帰ろう。俺たちはこれで終わりじゃない。これから何十年も一緒に生きていくんだ。俺と一緒にお前の家に行こう。」 「ジョンスさん・・・。」 ジョンスはユノンの手を引き、荷物を持ってやり、次の駅で降りた。ちょうど上り列車があり、それに乗り換えた。 ユノンはジョンスにずっと寄り添ってい、ジョンスはユノンの肩を抱いていた。 ユノンの家に着いた。ユノンは家の前まで来ると足が動かなくなった。 「怖いわ・・・。」 「大丈夫だ。俺がついているから。」 ジョンスはユノンの手を引き、ユノン宅の玄関を開けた。 家に入ると父と母がいた。母はユノンの顔を見るなり平手打ちした。 「あんたって子は、心配かけて・・・。」 父はジョンスを睨んでいた。 「申し訳ありません。私と一緒でした。」 ジョンスは深々と頭を下げた。 「ジョンスさんが悪いんじゃないの。私が勝手に出て行ったの。ジョンスさんと一緒に遠くへ行こうとしたのは私なの!ジョンスさんが家に戻ろうって言ってくれたの。だから彼は何も悪くないの!お願い、わかって下さい。」 ユノンが泣きながら叫んだ。 「こんなところでいつまでも話すつもりか。中に入りなさい。・・・お前もだ。」 リビングのソファに父と母、ジョンスとユノンが向かい合うように座った。 「ユノンさん、なんでこんなまねを・・・。」 「お母様、お父様申し訳ありません。実は・・・。」 ユノンがしゃべろうとするのをさえぎってジョンスが言った。 「私がもうすぐ遠いところに長期間仕事に行くことをユノンさんにお話したのが昨日です。私のために彼女につらい思いをさせてしまい、大変申し訳なく思っています。私は彼女を愛しています。ですが、過去の清算のために、彼女に苦労を強いることになってしまいました。・・・今日彼女に待っていてほしいと言いました。お願いします、ユノンさんと一緒に生きることをお許しください。」 ジョンスはソファから降り、床に頭をつけた。 「ジョンスさん!」 ユノンはジョンスの気持ちが痛く、ジョンスにすがりついた。 「ユノンさん、やめて!」 母は泣きながら叫んだ。だがユノンもジョンスの隣に頭をついて言った。 「お父様、お母様、私も同じ気持ちです。私はジョンスさん以外の人は考えられません。何年かかろうとも待っていようと思っています。お願いします、ジョンスさんが行くまでの間、二人で過ごす時間を下さい。」 「何を言っているの!そんなこと許せるわけないでしょう!あなたとジョンスさんでは何もかもが違いすぎるの。一緒になんて暮らせないわ!もうやめて!ジョンスさん、娘を返して!素直だったユノンさんを返して!」 母は狂ったように泣き叫んだ。 父は表情ひとつ変えなかった。 「おい、お前は寝室にでも行ってろ。ユノンは自分の部屋に行きなさい。二人とも俺が呼ぶまで来るな。俺はこいつと二人だけで話がある。」 「お父様、何をお話なさるの?私も一緒に聞きます。」 ユノンは驚いて言った。 「駄目だ。上に行きなさい。」 有無を言わせぬ父の顔つきに、母は泣きやみ、ユノンを促して2階に上がった。 父はおもむろにタバコを取り出し、一服吸った。 「いつまで床に座っているんだ。そこへ座れ。」 そう言うと背面の壁際の棚から1冊の報告書を取り出し、ソファの前のテーブルの上にばさりと置いた。 「それを見ろ。」 ジョンスが開くと、ジョンスのすべてについて調べられていた。故郷、家族関係、学歴、職歴、そして犯罪歴や女関係、友人関係に至るまで、ジョンス自身が忘れていたことや忘れたくても消せない過去まで詳細に書いてあった。言葉を失い報告書を見つめるジョンスを気にもかけない様子で、父はタバコの煙を吐いた。 「・・・俺の仕事を知っているか。」 父はユノンの前で一度たりとも見せたことのない厳しい表情でまた口を開いた。 「俺はな、今業界2位のローン会社の社長だ。1位と3位から5位は財閥系だ。俺の会社だけ、一代での成り上がりだ。中小企業に金を貸して俺は会社を伸ばした。ユノンは箱入り娘に育てたが、あいつにはとても言えないようなことも随分してきた。・・・企業に金を貸すときにどうやるかわかるか?10億の金を貸すのにはな、徹底的に調べ上げる。社長の私生活に至るまでこれ以上ないくらい調べて、そいつが金を貸すに足るやつかどうか見極めるんだ。結局会社は人だからな。希望どおり10億貸すのか、1億しか出せないのか。利息は10%にするか30%にするか。大口の契約はすべて最終決定は俺がしてきた。最終決定をするときに俺が見るのは、そいつの目だ。どんなに調べ上げても、それは過去の話だ。未来のことはわからない。だから、俺は俺の目を信じる。そいつの目に写っているものが何かを見極める・・・。」 父はすっかり灰になったタバコを灰皿に捨て、もう1本のタバコに火をつけ、2度吸い込んだ。 ジョンスは父をいつしかまっすぐに見つめ、話を聞いていた。 「この報告書を見りゃ、誰だって娘をやろうなんざ思わん。真っ黒だからな。だがここから先のことは俺が見るしかない。・・・お前は、いつからそんな目をしている。」 父が睨むようにジョンスの瞳を見た。 「ユノンさんと出会ってからです。」 ジョンスははっきりと言った。 「・・・そうか・・・。」 父はまたタバコを吸い、天井を見上げた。 「ユノンの目も変わった・・・。」 父は最後にタバコをもう1度吸うと揉み消した。そして勢いよく立ち上がり、ジョンスの胸ぐらをつかんだ。 「俺にとってあの子は100億、1000億積まれても代えられない宝だ。お前風情にやれると思っているのか!」 ドスッ!と鈍い音がして、ジョンスは床に崩れ落ちた。 「う・・・。」 父はジョンスの腹を殴った右手を左手で握った。 「1回殴ったくらいで俺の気が収まったと思うなよ。だがな、だが・・・。」 父は自分が殴られたかのようにソファに座り込んだ。涙が一筋頬を伝っていた。 「あの子の目を変えたのはお前だ・・・。そしてお前を変えたのもあいつか・・・。」 ジョンスはいつしか床に正座し、背筋を伸ばしやや俯いていた。 その姿を父は見つめていた。 「あの子はお前を待っていると言うが、本当に何年も待てるかはわからん。それにお前が決めた仕事、無事帰ってこられるのかもわからん。そんなヤツに大事な娘をやるとは言えない・・・。」 父は天井を見上げた。 「だがあの子は止められないだろうな・・・。」 父はソファに座り直し、新しいタバコに火をつけ、ゆっくりと1本吸い終えた。 「お前の仕事が始まる前に必ずユノンを家に送り届けろ。それを約束するならどこへでも連れて行け。」 父が吐き捨てるように言った。 ジョンスは床に頭をこすりつけるように下げた。 「ありがとうございます。」 「ただし、ひとつ条件がある。」 父はジョンスを上から睨みつけるように言った。 「お前が向こうに行っている間、ユノンと一切連絡を取るな。そして仕事の間は帰ってくるな。」 「・・・はい。そのつもりでした。」 「何?」 「連絡しない、行っている間帰ってこない、ということを行く前に言うつもりでした。」 「・・・どうしてだ。」 父は自分の望みでもありながら、意外なジョンスの言葉に驚きが隠せなかった。ジョンスは立ち上がり、テーブルの上の報告書を開いた。 「ここにも書いてあるとおり、これから行く現場は危険が伴います。それはユノンさんには言っていません。無責任だと思いますが、どうしてもそれは言えません・・・。連絡を取っていると、少しでも連絡が取れなくなった時に、さらに不安を煽ります。だから・・・私は必ず帰ってこようと思います。それだけを彼女と約束して行こうと思っています。」 「そうか・・・。」 父の目にはまた涙が光り、ジョンスの瞳からもぽたりと床に涙がこぼれ落ちた。 父は寝室に上がり、母と話した。寝室からは母の叫び声が漏れていたが、それもやがて静かになり、泣きはらした目の母と怒ったような顔をした父が出てきた。そしてユノンを呼び、また4人がリビングで対面した。 「ユノン、まだお前たちを許すわけではない。だがお前の気持ちが父さんたちでは止められないことも分かった。だからジョンスが仕事に行くまでの1週間、二人で過ごすことを許す。だが、必ず戻ってこい。わかったな。」 母は涙を流していた。 ユノンは父を見つめ、きっぱりと言った。 「ありがとうございます、お父様。」 そして母の方を向いた。 「お母様、1週間たったら必ず戻りますから、お許し下さい。」 ジョンスも頭を下げた。 ユノンはあらためて簡単な荷造りをして、二人で家を出て行った。 その二人を父と母は見えなくなるまで見つめていた。 「30年前のお前の父親もこんな気持ちだったんだろうな。」 「そうかもしれませんね・・・。」 ユノンとジョンスは手をつないで歩いた。考えてみると、二人でゆったりとした気持ちで手をつないで歩いたことは初めてだった。 「ジョンスさん、ありがとう。」 「何が。」 「まさかお父様がこんな形で私たちを見送ってくれるなんて思いもしなかったわ。あのまま遠くへ行っていたら一生許してもらえないかもしれなかった・・・。」 「お父様たちに感謝しよう。」 「うん・・・。」 二人はまたしばらく歩き、バス停についた。 「どこへ行く?あまり金がないからいいところへは連れて行ってやれないけど、近くへ旅行にでも行こうか?」 「私、あなたとしたいことがあるの。」 「何?」 ユノンは恥ずかしそうにうつむいた。 「どうしたの?」 「あなたと一緒に暮らしてみたいの。夫婦みたいに・・・。」 「バカだな、お前・・・。」 ジョンスはユノンの肩を抱き寄せた。 (続く)
by yumi-omma
| 2005-11-24 16:35
| 小説
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